「山田隆太郎展 令和の薪窯」ありがとうございました

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山田隆太郎展 令和の薪窯」は本日終了しました。会期中ご来店頂きました皆様に厚く御礼申し上げます。

桃居の広瀬一郎さんが以前よりお話されている「工芸30年周期説」があります。工芸の流れを大きく30年ごとに区切って、その特徴を炙り出した視点です。1930~1960年(昭和初期~昭和中期)まで桃山陶再興を目指した昭和の巨匠が活躍した時代。1960年~1990年(昭和中期~昭和後期)陶芸の枠を超えた前衛陶の時代。1990年~2020年(平成)暮らしに根差した生活陶の時代。おおよそ30年ごとに工芸を取り巻く環境は変化しているという広瀬さんの慧眼です。実際には時代は連続しているので、明瞭に区分することは出来ませんが、俯瞰することで見えてくる時代感は確かにあります。

2000年頃から顕著になった暮らしに寄り添ううつわ。いわゆる生活工芸は、経済成長から成熟型社会に移行する過程で生まれた、より身近なリアリティを大切にする流れであったと思います。自己表現よりも抑制的で謙虚な美の在り方。経済的にも精神的にも大きな拠り所を失った社会で、個々の足元を見つ直そうとする循環型社会の価値に沿った新たな工芸観だったように思います。

ここ数年、うつわの変化を感じています。シンプルであった器が、より装飾的になり、あるいは情緒的な内面を表出させる方向が散見されます。時代は常に相対的(人と同じものを作りたくない)に流れ、また経済的合理性(売れるものに類したものが広がる)によってパイを生み出します。さらにSNSの広がりや中国マーケットの参入など外的要因も少なからずあるでしょう。信念や思想から捉えるよりも、それは明らかです。しかしながら、そこには来るべき時代が映る鏡のような一面もあります。何ゆえにそういうものが今生まれるのか。

山田隆太郎さんのうつわは、平成のうつわの流れの延長線上にありながら、新たな焼き物観を感じます。暮らしの器が古典や桃山の呪縛から手を切ったうえで成立していたのに対して、新たに昭和的焼き物を再考するような動向です。山田さんに限らず、原土から取り組み、焼き物をより根源的な視点で捉え直す若い作家が増えているように思います。しかし対象とするマーケットは旧来型の保守領域ではなく、もっと生活に近いフィールドです。今回敢えて「令和」を副題に添えたのは、時代の胎動を聞いてみたい思いからでした。まだ明確な定義はありませんが、このうねりを暫く見つめてみたいと思っています。

今回お持ち帰り頂きました山田さんの器が、皆様のお暮しと共に心を豊かにすることを願っております。どうもありがとうございました。


これからの営業案内

うつわノート(埼玉県川越市小仙波町1-7-6)
6/03(月)~6/07(金) 搬出・設営休
6/08(土)~6/16(日) 林志保展
6/17(月)~6/21(金) 搬出・設営休
6/22(土)~6/30(日) 梶原靖元・谷穹展

営業カレンダー

by sora_hikari | 2019-06-02 20:37 | 山田隆太郎展2019

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