2019年 04月 28日
「小野哲平展 衝動と暴力性」ありがとうございました
「小野哲平展 衝動と暴力性」は本日終了しました。会期中ご来店頂きました方、トークショウにご参加頂きました方、皆様のご厚情に御礼申し上げます。
写真は小野哲平さんが暮らす高知県谷相の風景。山間に棚田が連なる住まいと仕事場です。この場で実践されている日常を疎かにしない丁寧な暮らし。そこから生まれる謙虚で嘘のないうつわ。この価値観こそが、平成時代に芽生えた暮らしに寄り添う「うつわ」の在り方だったように思います。
平成の始め1990年代から生活に向けた「うつわ作家」が現れ始め、やがて2000年代に大きな波となりました。当時、陶芸家と言えば美術画廊、デパート等で発表する産地を主体とする焼き物や、あるいは前衛陶芸が主流の中、日常の暮らしの価値に目を向けた、わずかな作り手たちがいました。哲平さんもそのお一人です。これは当時の経済状況、市場の変化と共に、自分達の身の回りにある大切さに気づく精神的成長であったように思います。
この30年間、まさに生活者のための「うつわ」という価値が広く根付きました。優秀な作家が増え、良質かつ適正な価格の「うつわ」を誰しも手に出来る豊かな市場が生まれました。しかし、この状況は漫然と自然発生した訳ではありません。当時の陶芸界の状況を疑い、まだ明確には無かった「暮らしのうつわ」の意味に気付き、手探りで進んできた作り手、伝え手、そして使い手によって徐々にその価値が定着してきました。
今、誰しも暮らしのうつわを迷いなく作れる時代になりました。しかし、暮らしに寄り添う器という言葉が形骸化し、その意味が虚ろな流行りとして広がっているようにも思えます。作る人も伝える人も同調的で、批評性なく流行を再生産することが出来るようになっているように思います。
言葉にすること、思想を語ること、理屈をこねること。あるいは批評し批判されること。今の時代には歓迎されないことかもしれません。しかし平成に築かれたこのうつわの価値を、より確かなものにするために、時に異議を唱えることも必要ではないでしょうか。疑うことをやめてしまえば、一過性の流行として消費されてしまう危険性もあると思います。刺激を発することで、能動的意識が生まれると思います。平成の暮れるこの時に、小野哲平さんの今回の提言には意義があったと思います。
あと数日で令和新時代。哲平さんよりもずっと若い才能が多く育っています。ぜひ時代に疑いをもって、時代に照らした芸術性にも意識を向けて欲しいと思っています。あらためて小野哲平さんが作る「うつわ」の意味も考えて欲しいと思います。
今回は、たくさんの作品をご成約頂くことが出来ました。幅広い方により、こつこつと積み上がるように。それぞれの方に何かしらの「気付き」が沸き起こったと信じています。この公平な評価は、何よりの励みと自信に繋がります。皆様のご理解と行動に深く感謝申し上げます。
この度はありがとうございました。
これからの営業案内
うつわノート(埼玉県川越市小仙波町1-7-6)
4/29(月)~5/10(金) 搬出・設営休
5/11(土)~5/18(土) 豊増一雄展
5/19(日)~5/24(金) 搬出・設営休
5/25(土)~6/03(日) 山田隆太郎展
営業カレンダー
by sora_hikari | 2019-04-28 23:59 | 小野哲平展2019