「小野哲平展  衝動と暴力性」7日目

小野哲平展  衝動と暴力性」の7日目。

「うつわ」という定型の範疇にあれば、誰しも使え、買うことが出来、公平な評価が与えられます。脈々と築かれた用の美という拠り所がある。それゆえの健全性があるでしょう。しかし、作者側から見れば、その範囲でしか価値を認識されないというフラストレーションもあるのではないでしょうか。

さて、ここで紹介する作品は、「うつわ」というフォーマットから離れ、焼き物の断片に針金が加わったアンバランスで異質な造形物です。これもまた「うつわ作家」である小野哲平さんの「うつわ」へのアンチテーゼのように見えます。

参照する拠り所のない物は、見る側を冷酷に突き放します。「何なのか、これは?」。しかし明らかに日頃の哲平さんのうつわと共通する要素があり、完成形から切り取られた肉片のようです。つまり、これも粘土を焼くことで生まれる「うつわ」と同質の意味を有しているのです。そこに針金を加えることで、部分から独立したひとつの造形物として成立するのです。

うつわという定型フォーマットから解放された欠片。針金によって空間に浮遊させ、あるいは空間を取り込むことで重さから解放している。部分も全体に劣らぬ美しさを備えている。「ものはら」(焼け損ないの廃棄場)にある一片の美しさ。敢えて全体を排除することで「うつわ」の根幹にある造形物としての美しさを浮き彫りにしようとする意図を感じるのです。

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小野哲平展  衝動と暴力性
2019年4月20日(土)-28日(日) 11時~18時 
ギャラリーうつわノート 埼玉県川越市小仙波町1-7-6 地図


小野哲平プロフィール
1958年 愛媛県松山市に生まれる
1978年 岡山県備前にて修業
1980年 沖縄県知花にて修業
1982年 常滑にて鯉江良二氏に弟子入り
1985年 愛知県常滑市にて独立
1998年 高知県谷相に移住
2019年 現在、同地にて作陶

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by sora_hikari | 2019-04-26 10:30 | 小野哲平展2019

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