「伊藤雅風展  急須愛」5日目

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伊藤雅風 展  急須愛 」(~12/25迄)の5日目。

日本では横手の急須が多く使われますが、このような後手の急須の方が歴史的に古い時代になります。茶銚(ちゃちょう)または茶壺(ちゃふぅ)と呼ばれる中国発祥の形。素地別の朱泥(しゅでい)、紫泥(しでい)、烏泥(うでい)、梨皮泥(りひでい)の分類の他、形状や刻印による具輪珠、萬豊順記、三友居の三大茶銚など、伝統形の基本となるのも中国から来ています。

江戸時代には中国文化は知識や思想に於いて憧憬の的であり、単なる喫茶に留まらない文人趣味にまで昇華した煎茶は、日本でも知識文化層の嗜みでもありました。しかしそのような煎茶趣味も明治まで続きますが、日本が国力をつけ、やがて近隣国を凌駕する立場に転ずると、ナショナリズムの台頭と共に日本独自の文化に目が向けられるようになります。これは焼き物の道具としての位置づけにも影響しているでしょう。斯様に煎茶の歴史を辿ると江戸から明治の中国趣味に繋がります。

今、中国では新たな中国茶ブームがあり、そこに日本人作家の造る急須や茶道具が人気を集めています。特に急須は日本に於ける抹茶茶碗のような特殊な位置づけにあるようです。経済発展を遂げた先に、あらためて精神性を求める茶が尊ばれているのです。唐の時代、明の時代に自らの国が培った茶の文化が、隣国ガラパゴス日本でその精神が引き継がれていたことへの驚きもあったのではないでしょうか。

さて伊藤雅風さんの造る急須ですが、常滑伝統の形を引き継ぎながら、中国伝来の茶銚にも取り組んでいます。それは懐古趣味的な伝統の再現ではなく、雅風さんの考えを盛り込んだ現代のお茶に繋がる急須です。古典の新解釈と言えばいいでしょうか、若干30歳の雅風さんの眼で捉えた新しい風を感じる急須なのです。


伊藤雅風展  急須愛
2018年12月15日(土)~25日(火)会期中無休
営業時間 11時~18時 
ギャラリーうつわノート 埼玉県川越市小仙波町1-7-6 地図

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伊藤雅風プロフィール
1988年 愛知県常滑市に生まれる
2007年 常滑高等学校セラミック科卒業
2009年 村越風月氏に師事
2011年 名古屋造形大学産業工芸コース卒業
2012年 独立
2018年 現在、愛知県常滑市にて制作


by sora_hikari | 2018-12-19 22:00 | 伊藤雅風展2018

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