「岡モータース展 人生曇りときどき晴れ」 働く人

岡モータース展 人生曇りときどき晴れ 」(~9/11まで)を開催中です。

岡さんの作るモータースの多くには背景となるストーリーがあります。それは岡さんの目による人間観察です。妄想して頭の中に「面白い人」が描かれるのです。しかし滑稽であろうと、無理があろうと、基本的には人に対する温かな目線を感じるのです。今日はそんな中から「働く人たちモータース」を取り上げてみました。ストーリーも合わせてご覧ください。


「ラーメン屋見習い」
梅野文花
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福岡の老舗豚骨ラーメン店の跡取り息子と東京の老舗醤油ラーメン店の跡取り娘が恋に落ち、両親の反対を押し切って和歌山に駆け落ちした。それから2年後二人の間に文花が生まれた。文花は両親が駆け落ちしたこともラーメン屋の生まれのことも知らずに育つ。そんな梅野家の食卓には一度もラーメンが出ることはなかった。

ある日文花が友達の家で夕飯をご馳走になるときに初めてラーメンと出会う。文花はあまりの美味しさに感動し、ラーメンに興味を持つようになる。帰ってさっそく両親にラーメンが美味しかったことやまたラーメンが食べたい旨を伝えると、両親は曇った顔で「そうね」としか答えてくれなかった。いつもと様子が違うと感じた文花は子供ながらに空気を察してそれ以上両親には言わなかった。

それから数年後、高校生になった文花は両親に内緒でラーメン屋でバイトをするようになった。バイト代が入ると気になるラーメン屋に行っては味を研究していた。そんなある日バイト先に「店が和歌山部門で載ったから」と 全国うまいラーメン特集 という雑誌が置かれていた。

パラパラめくる福岡のページに同じ苗字の父親によく似たおじさんを見つけて手が止まった。まさかと思いつつ東京のページをめくると母親の名前と同じ店名の暖簾の前で腕を組むおじさんを見つけた。そんな漫画みたいな話あるわけがない と思いながらも文花は自分の出生を確信した。そして豚骨ラーメンの父と醤油ラーメンの母から生まれた自分の存在はまさに豚骨醤油の和歌山ラーメンだと気づく。

文花はまだ見ぬ祖父母に認めてもらえるような渾身の和歌山ラーメンを作る事を心に誓うのだった。



「TATSUYA (ビデオソムリエ)」
永賀晋作、永賀久作
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永賀晋作 
最新映画に強く、ヒット作から日本未公開映画までジャンルを問わず網羅している。最近はお客さんの顔を見ただけで好みの映画を当てることができるようになった。

永賀久作 
昔の映画に造詣が深くマニア垂涎のVHSを取り置くこだわりぶり。VHSを知らないミレニアムキッズにはデッキと使いかたのレクチャーもする伝道師。




料理人
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毎月忙しすぎて気付けば食事がゼリーになっていた。その事を親と電話中にポロっと言ったら、その5時間後両親が軽トラに肉やら野菜やらを満載にして押しかけてきた。そして「ちゃんとご飯は食べなだめよ」そう言ってテーブルいっぱいの美味しいご飯を用意してくれた。久々の家の味とお腹以外も満たされる心地に、「自分は食べる事の意味を忘れていたな」と気付いたのだった。



親子F綾子
親子A章雄
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親子F綾子
ダメ元で漫画コンテストに送ったナンセンスギャグ漫画が見事に大賞に選ばれ、その作品が雑誌に掲載されるやそこかしこで評判となる。「天才」「歴史に残る新人現る」「次回作が早く読みたい」期待に胸膨らませる読者たちの声に応えるように綾子は渾身の新作を発表した。

しかし新作の反応は散々。「才能が死んだ瞬間を見た」「一発屋」「期待を返せ」「超高速劣化」漫画のレビューには綾子への罵詈雑言が踊った。綾子はそれでも次の漫画を描こうとペンを持つが、震えて線が引けなくなってしまった。綾子はすべてのSNSを消し、誰にも転居先を告げず知らない土地に引っ越した。しばらくして あれだけ散々騒いでいた人たちも綾子の事など忘れていった。

見知らぬ土地で派遣社員として働き、派遣先の会社で出会った男性と結婚し、男の子を授かった。漫画の夢を諦めたけど、それでこの子に出会えたんだからこれでよかったのかもしれない。綾子は子育てに追われしだいに漫画の事を考えなくなった。

息子が5歳になりようやく余裕が出来てきた頃、息子が落書き帳に一生懸命何かを書いているのを見つけた。「これなぁに?」「おはなし!」どうやら彼にしか読めない文字で物語を何やら書いているらしかった。「どんなお話なの?」「あのね..」彼の口から突飛で強烈なストーリーが紡がれた。あまりに面白いのでチラシの裏にメモを取り、「もしかしてその人ってこんな感じ ?」と登場人物のイラストを描いた。「そうそう!こんな人!じゃあこの人も描いてみて!」二人は夢中で紙に向かって物語を描いた。綾子は息子と絵を描きながらしだいに漫画の楽しさを思い出してきた。そしてタンスの奥の奥に仕舞った道具たちを再び机の上に出すのだった。

親子A章雄
一人っ子で一人遊びが大得意。どこに行く時も常に落書き帳とペンを持っている。マイペースで保育園ではワンツーテンポ遅れていてよく先生に注意される。

ちょっとしたものが変なものに見えたりするとそこから妄想が始まりボーッと動かなくなる癖がある。なので同級生からは変な子だと思われている。しかし本人は気にする事もなく今日もニコニコご機嫌である。



「コンビニエンスな生活」
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一日に何度も足を運んでしまうほどコンビニが落ち着く彼女。引っ越し先を探す際に一階がコンビニになっているマンションを見つけて即決する。暮らして数ヶ月、自分の部屋にいる時間よりもコンビニにいる時間の方が多いような気がしてきたところにバイト募集の文字を見つけ、すぐさま面接を受けに行った。一応バイト先だが家のようにかってがわかるので新米アルバイトなのに熟練店長並みに働けた。近隣住人からもお墨付きで彼女のレジにはいつも多くの人が並ぶ。



「引越し屋さん」
小亀戸 ありす
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体力を生かせる仕事を探して引っ越し業に就く。頑張り屋で一人で重いものを運んだりするのだが、周りが「無理しないで」と心配するので気を遣わせないために「これぐらいの荷物、私なら3秒」とビッグマウスをかましてしまう。実際ヒョイヒョイと運んでしまうのでだんだん周りから「引っ越し界のヘビー級チャンピオン」と呼ばれるようになった。毎日の力仕事で逞しくなった二の腕が誇らしいのだが、お気に入りのパフスリーブシャツの袖がパンパンで着れなくなってしまったのがちょっと悲しい乙女心。



「名物ここにあり」
川里十三
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名物の芋菓子を長年売る名物おじさん。買う気がなくても店の前を通るとたちまちおじさんの話術にはまり、気づけばたくさんの芋菓子を買ってしまう。


「相撲大会 シングルの部」
古徳武蔵
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自分の敵は自分。




岡モータース展  人生曇りときどき晴れ
2016年 9月3日(土)~11日(日)
営業時間 11時~18時 
次回作家在廊日 9月10日(土)・11日(日)
ギャラリーうつわノート(埼玉県川越市) 地図

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岡 歩(おか あゆみ) プロフィール
1986年 和歌山県生まれ
2006年 常滑市陶芸研究所修了
2009年 モータスを作り始める
2016年 現在、愛知県常滑市在住


by sora_hikari | 2016-09-05 17:45 | 岡モータース2016

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