「小野哲平 -その造形-」 パンク

小野哲平 ~その造形~」展(4/12~22迄)の6日目。会期は折り返しとなりました。

哲平さんの器は日常性を基本にした器ですが、モノとしての存在感もしっかりと持ち合せています。その器は内側から発するエネルギーみたいなものを感じます。それはどこから来るのか。外形的な要素の前に、陶芸家としての成り立ちも知ると分かり易いかもしれません。哲平さんは、今でこそ暮らし向きの器作家として知られていますが、独立当初は、かなり前衛的な試みをしていたことはご存知でしょうか。若い頃は、備前や沖縄で陶芸を学びますが、その階層的な焼き物システムに違和感を持ち、当時アバンギャルドな焼物で知られていた常滑の鯉江良二さんの元に飛び込みます。修業時代のエピソードもいろいろありますが、結局、鯉江さんから学んだのは技術的な事よりも、既存価値に囚われない陶芸の自由さだったのではないかと思います。3年の修業時代を経て常滑の地で独立します。その頃に発表していたのは、例えば「えさ鉢展」。犬猫のための器。食べる目的だけに作られた、ある意味で純粋な器の提示。また例えば「量り売りの器展」。作品ごとに価値づけるのではなく、器の重量だけを基準に販売するという、見た目の焼き物への異議。これらは一例でしかありませんが、このような試みによって陶芸界へのアンチテーゼを行っていました。哲平さんの出発点には、そういった対抗軸となる壁のようなものが存在したのでしょうし、そういう枠組みの窮屈さを同時代の若手達が突破しようとする気運があった時期なのではないでしょうか。当時、日常の器を作る作家は、茶陶、美術工芸のハイカルチャーに対して、まだサブカルチャーの域でしかなかったのだと思います。哲平さんのいわばパンクな陶芸時代、そういう価値破壊から純粋な「モノ」の意味を問う時期へ経て、今のうつわづくり繋がっているのです。陶芸家の作る普段使いの器は、今や当たり前のことですが、哲平さんの器の内側に秘められた熱量を感じるのは、こういう時代から引き継がれた衝動とも関係しているのだと思います。

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小野哲平  ~その造形~
2014年 4月12日(土)~22日(火) 会期中無休
営業時間 11時 ~18時  
ギャラリーうつわノート(埼玉県川越市) 地図

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by sora_hikari | 2014-04-17 18:02 | 小野哲平2014

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