2013年 02月 21日
沢田マンション @ 高知
高知市の薊野(あぞうの)北町にある沢田マンションに行ってきました。ここは、沢田嘉農さん(故人)と裕江さんご夫婦によって建てられた手造りマンションです。1971年に着手し、3期の工事を経て1985年にほぼ今の地下1階・地上5階建てになりました。今だに各所で改装工事が行われ、変化し続けているそうです。遠目にはレトロな中規模マンションですが、敷地に近づくと外周に並ぶ古い発動機の姿で少し様子の変わったマンションであることに気づきます。さらに敷地内に入り、スロープと階段を昇って屋上まで辿りつくと、その異様な光景に驚きます。屋上には農園、池、放し飼いの鶏、そしてこのマンションの歴史を象徴するように手製の赤いクレーンがそびえ立っています。上層に続くスロープは、自動車が登れる造りで、後から付けられたそうです。セルフビルドの一軒家は良くある話ですが、全戸数68戸もある鉄筋コンクリート製のマンションを手造りした例は聞いたことがありません。自己を顕示するような天守閣のある城ならまだ理解できるのですが、人の住む集合住宅というのがユニークです。テレビ、雑誌などで紹介されることも多いと聞きましたが、実際にマンションの中に入り、その現実を目にするとこれを造り上げた沢田ご夫妻の執念にただただ感服します。小学校5年の時に既にアパート経営にあこがれ、その後は山の中で製材の仕事、そして木造の住宅やアパートを何軒も建てていたそうです。しかし建築に関しては専門教育は受けておらず、全て自ら積み上げた経験のみ。このマンションづくりに際しても図面はありません。しかし基礎工事から内装、設備工事まで一貫した手造りのSRC造りの本格派建造物。今の建築基準法には適合しませんが、その集合住宅の在り方には学ぶべきところも多いようです。全戸すべて違う間取り。各部屋を仕切るベランダの仕切りはなく、通路として人が行き交うことができます。住むのは20代の学生から90代の高齢者まで。沢田マンションというひとつの村であり、現代版の立体長屋といった様相です。外からの見学者も多く、敷地は自由に入ることができ、住民によるボランティアの館内ツアーも行われています。ご主人が亡くなる4日前に屋上に鉄骨の柱を設置したそうです。1971年建築当初の目標は10階建ての100世帯。さらに上層階を目指していたのか、最後までマンション造りにかけた思いの強さを感じるエピソードです。
沢田マンションに関する情報
マンション・ラボによるレポート
沢田マンションのWIKIPEDIA
沢田マンションのフェイスブック
建築マップのレポート
書籍:沢田マンション物語 2人で作った夢の城 (amazon)
古庄弘枝 (著) 講談社プラスアルファ文庫(2009/9/17 ※単行本は2002年発売) 860円
〒781-0011 高知県高知市薊野北町1-10-3
1階にroom38というギャラリーがあります。
by sora_hikari | 2013-02-21 23:19 | 見て歩き