2012年 01月 09日
スリップウェアと西洋工芸 @ 日本民藝館
駒場の日本民藝館で開催されている「スリップウェアと西洋工芸」展に行ってきました。本館で2004年に開催(☆)されて以来のスリップウェアを特集した内容です。スリップウェアとは、泥状の化粧土(slip=泥漿)で模様を描いた器(WARE)を呼びます。古くは紀元前の中国やメソポタミア、近世ではオランダ・ドイツでも見られるようですが、本展では、英国を中心とする18世紀~19世紀のスリップウェアが展示されています。本国イギリスではスリップウェアと言うと、トフトウェアと呼ばれる作者の銘を入れた鑑賞用の飾り皿がメインだったそうですが、日常食器として使われた無銘のスリップウェアを見立てたのが柳宗悦や民藝運動に関わった陶芸家です。装飾はシンプルな抽象的な模様が多く、実際にオーブンの中で火に掛けられ、料理が盛られた生活用具。ガレナ釉という低火度釉で焼かれた表面と厚手の器体。その上に描かれた線状の模様は、装飾的でありながら、絵柄を誇示するような作為がなく、素朴で柔和な印象があります。それらは英国の古窯で焼かれたものですが、日本の民藝運動家によって、その存在価値を見出された日本的な美意識に基づく器と言えます。その影響を受けたリーチ、濱田庄司、河井寛次郎、舩木道忠、舩木研兒によるスリップウェアの器も作られました。本会場では、スリップウェアの展示と同時に、家具、ピュータ、デルフトタイル、壁画、ネウマ譜など中世の西洋工芸品も見ることができます。いずれも鑑賞用の展示物ですが、現在のブロカント興味の視点で見ると、どれも所有欲が湧きおこる垂涎の物ばかりです。民藝館の所有する西洋の優品を目にすることが出来、見応えのある展示会でした。
スリップウェアと西洋工芸
2012年1月7日(土)~3月25日(日)
10:00~17:00
月曜休館(祝日の場合は翌日)
入館料:一般1000円
日本民藝館 (東京・駒場東大前) ホームページ
※本展のちらし(PDF)
by sora_hikari | 2012-01-09 00:15 | 見て歩き