服部竜也 展 仕事場

服部竜也展も残すところあと1日(11/15迄)となりました。服部さんは、岐阜県多治見市生まれ。現在はその隣町の土岐市(とき)にある昭和初期の平屋木造家に仕事場を構えていらっしゃいます。周辺の住宅の敷地には陶器鋳込み用の石膏型が積まれた風景も目にすることができる窯業地域です。この土岐市や多治見市をはじめとする美濃地方は、その昔、桃山時代にヤキモノの産地として栄え、桃山陶を支える中心地でした。近年では、荒川豊蔵氏()により古志野の陶片発掘を契機に、昭和初期の桃山陶の再現を目指した陶芸ブームの発祥の地でもあります。現在でも国内の陶磁器生産のシェア50%を占める大きな窯業地です。このように陶芸を志す人達にとっては、恵まれた環境である一方、景気の動向も受け易い窯業地でもあると言えます。かつての伝統に根ざした陶芸や産業用窯業がシュリンクする中、若い作り手が、現地の商圏や旧来の伝統を超えて、大都市に向けた価値観で陶芸を捉え直す動きがでてきます。そういう若い作り手の輩出の下支えとなっているのが、多治見周辺の窯業関連の学校です。服部さんも、この地の多治見市意匠研究所のご出身。先輩には現在の陶芸界で活躍する方々が幾人もいらっしゃいます。そういう環境の中、お互いに影響し合い、切磋琢磨し、自分自身の器づくりをする事は、刺激的であると同時に、独自のスタイルを見出す苦しさもあるのではないかと思います。何かに影響され、それを咀嚼しながら自分自身の表現を見つける作業。手作業だけでなく、どうありたいかという精神的な形而上の意識が、このような地では大切になるのかもしれません。服部さんの作る器はいくつかのメタファーを有しながら、自己の器として抜けだそうとしている面白い時期なのだと思います。その為には、基本を大切にすること。スタンダードな形、使い易い手取り感、顧客の日常に合う器づくり。この数日間、服部さんの器を見続ける中で、個性と汎用の葛藤の中から生まれた器のスタイルを感じとることができました。服部さんのFORM & STYLE。それは器の外形だけでない、作り手としての意識の在り方なのかもしれません。

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仕事場では、今日の汚れは、今日掃除し、明日に残さないそうです。それが、服部さんの繊細な器づくりの原点であり、精神状態を保ち続けるために必要な日常の儀式なのだろうと思います。

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服部竜也展 ~FORM & STYLE~
2011年11月3日(木)~15日(火) 
11:00~18:00
ギャラリーうつわノート (埼玉県川越市) ホームページ

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by sora_hikari | 2011-11-14 19:25 | 服部竜也2011

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