エル・アナツイ 展 @ 埼玉県立近代美術館

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北浦和にある埼玉県立近代美術館で開催中の「彫刻家 エル・アナツイのアフリカ」展に行ってきました。エル・アナツイ氏は1944年にガーナで生まれ、現在ナイジェリアのンスカを拠点にし、ヴェネツィアビエンナーレにも参加する現代美術アーチストです。本展は昨年9月に大阪の国立民族学博物館の展示を皮切りに、4つの美術館を巡回する最後の開催会場になります。アフリカンアートと言うと、まずピカソや岡本太郎が影響を受けたプリミティブな造形が思い浮かびますが、エル・アナツイ氏の作品はアフリカという文化を背景にしながらも、とても洗練された現代性のある表現です。ボトルの金属製キャップをパーツにし、それを何千何万個という単位で銅線で繋ぎ合せた巨大なメタル・タペストリー。それは壁面一杯に波打ちながら広がり、見る者を圧倒します。赤、黒、金を基調とする複雑な色調。金属特有の質感と光。細かなうろこが集積した平面が、重量のあるうねりを作り出します。近づいて見ると、つぶしたり、広げたり、輪っかにした瓶の金属製フタ。部分と全体の不思議。それはアフリカの王族の衣裳のようにも見えますが、日本の艶やかな西陣織の着物にも、そしてクリムトの描く絵画のようにも見えます。会場入口付近では、1990年代に作られた木や金属による壁面作品や立体作品も置かれています。その頃の作品は、抽象アートらしい観念性を感じますが、近年のメタル・タペストリーは、使用される素材が単純化され、より緻密かつ大胆な構成になることで、かえって理屈や言葉を超えたシンプルな感動が心に刺さります。会場にはアジンクラ()、ケンテクロス()と呼ばれる祝儀や儀礼に使われる織物や、彫像()、そして廃品利用のおもちゃなど、アナツイ氏の作品を紐解くアフリカ文化の展示や、植民地からの独立という複雑な歴史的背景も同時に解説されています。本展はアフリカの現代アートの一端を知る楽しさもありますが、そういう前提がなくても、ただ作品の前に立つだけで、色と質感の不思議に包まれてトリップ感を味わえる貴重な展示会です。


彫刻家 エル・アナツイのアフリカ
2011年7月2日~8月28日
10:00~17:30
月曜休館
観覧料:一般1000円
埼玉県立近代美術館 ホームページ

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by sora_hikari | 2011-08-03 20:31 | 見て歩き

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