2010年 09月 06日
渡辺遼 展 @ OUTBOUND










吉祥寺のOUTBOUNDで開催されている渡辺遼さんの個展に行ってきました。渡辺さんは埼玉県で鉄を使ったオブジェを作っておられます。それらは、鉄の板を加工して張り合わせた物体です。外見は重厚に見えますが、実際は中が空洞になっています。鉄という無骨な素材を虚ろな存在に感じさせる不思議な造形感覚があります。道に落ちている石ころ、海に流れ着いた流木、森に転がる木の実のように、さりげないものと共通する存在を表せればと考えているそうです。手で加工して生み出す加工品ですから、実際には矛盾することではあるのですが、そういう造形に対するスタンスが、鉄と鉄を合わせた「鉄っぺら」、「鉄っきれ」、「ちいさな欠片」と称する作品を生み出すのだと思います。渡辺さんの取り組んでおられる製作物は、用途を持たない物体であり、アートという領域なのだろうと思うのですが、何故かその立ち位置はもっと生活空間に近いところにあるように感じます。それは製作物から受ける印象もありますが、それ以上に発表する場所にもあると思います。自分の作るものを、服や器や食べ物と同じようなラインに並べて接して欲しい、、そんな作り手としての意思があるように思います。そういう目線で見ると、渡辺さんの作るものは、どこかの国で作り続けられてきた生活民具や祭具のようにも見えてきます。「生活アート」。そんな言葉が相応しいのか分かりませんが、自己を前面に押し出す造形活動よりも、もっと生活空間に一輪の花を添えるような「ささやかな美」を求める作り手が、増えてきているように思います。
渡辺遼 ~任意の形態~
2010年8月28日(土)~9月6日(月) ※8月31日(火)休
11:00~19:00
OUTBOUND (東京・吉祥寺) ホームページ
※渡辺さんのホームページ
by sora_hikari | 2010-09-06 23:14 | 渡辺遼さん