2026年 02月 18日
「安永頼山展 枯木立の萌芽」2月21日(土)より





2月21日(土)から始まる「安永頼山展 枯木立の萌芽」の出品物です。
安永頼山さんによる白磁壷。今展の唐津の中にあって、ぐっとくる存在です。一見おだやかで、声高に主張することのない佇まい。しかし近づくほどに、その静けさの奥にある強度に胸を衝かれます。
なにゆえに白磁?と思う事なかれ。唐津の原点を辿れば、磁器生産に携わった朝鮮陶工の存在に行き着きますし、さらに時代が下れば、有田における磁器へと展開していく歴史があります。古唐津の底流には、李朝白磁、そして日本最初期の磁器へと連なる系譜が確かに流れています。その文脈に立てば、安永さんが白磁を手がけることは、むしろ自然な帰結とも言えるでしょう。
とはいえ、歴史をなぞることと、かたちを生み出すことは別の問題です。この壷は、ただ端正なだけの白磁ではありません。わずかに青みを帯びた柔らかな肌には、土味を思わせる細かな鉄点が散り、釉の溜まりやほのかな流れが景色をつくっています。肩は豊かに張りながらも、胴から裾へとかけてすっと引き締まり、凛とした緊張感を保つ。唐津茶碗にも通じる、どこか「枯れ」を含んだ質感が、この磁肌に宿っています。
枯れているのに、死んではいない。むしろ内側に静かな萌芽を秘めているかのような気配。今展のテーマである「枯木立の萌芽」は、この白磁にも重なります。白という無垢の色の奥に、歴史と記憶、そして作り手自身の現在が層を成して潜んでいる。静かであることの強さ。削ぎ落とすことで立ち現れる、芯のかたち。
この白磁壷は、唐津という土地の時間を透過しながら、安永頼山という作り手の現在形を、確かにここに示しているのです。
安永頼山展 枯木立の萌芽
2026年2月21日(土)~28日(土)
作家在廊日 2月21日
営業時間 11時~18時 最終日は17時迄
ギャラリーうつわノート 埼玉県川越市小仙波町1-7-6
経歴
1970年 島根県益田市生まれ
2001年 田中佐次郎氏に師事
2003年 藤ノ木土平氏に師事
2008年 登り窯を築窯し独立
2013年 田中佐次郎氏命名の「頼山」に改名
2025年 現在、佐賀県唐津市北波多にて制作
解説
古唐津発祥の地・唐津市北波多で作陶する安永頼山さん。本展では唐津の王道とも言える無地唐津、絵唐津を主軸に据えながら、掛け分けや黒唐津、さらには歴史的文脈から再解釈した白磁にも挑戦しています。伝統に深く根ざしつつ、その本質を見つめ直し、新たな表現へと踏み出した意欲的な内容となりました。
安永さんは唐津を「晩秋から初冬の枯木立」にたとえます。それは枯れ果てた景色ではなく、秋に葉を落とし、冬を耐え、春に再び芽吹くための静かな準備の時間。制作にあたっては、唐津焼の侘びた風情の中に、瑞々しい生命力や次の季節への予感をそっと潜ませることを大切にしていると語ります。潤いと温もりを感じさせる柔らかな肌、高台に現れる豊かで力強い土味――それこそが今回もっとも感じ取ってほしい見どころです。
古唐津は、華やかな装飾や鮮やかな色彩とは無縁で、朽ち葉のように枯れた風合いを湛えています。それでもなお人々に愛され続けてきた理由は、質素なものに趣を見いだす「侘び」、時の移ろいに深みを感じる「寂」という、日本人特有の美意識に通じるからでしょう。
しかしその魅力は、知識だけで理解されるものではありません。自然との共生を尊ぶ心、古刹や古道に触れたときの郷愁、形の背後から立ちのぼる情感。和歌の時代から受け継がれてきた、間接的に自然や感情を捉える感性が、私たちの内奥に息づいているのです。
焼き物を見ることは、形や色を味わうだけでなく、行間を読むように背景を感じ取る行為でもあります。茶盌は茶を喫する道具であると同時に、心を静かに高揚させる存在でもあります。安永頼山さんの唐津に触れ、その奥に宿る生命の気配を、ぜひ会場で実感してください。店主


# by sora_hikari | 2026-02-18 19:23 | 安永頼山2026


























