3月23日(土)から30日(土)まで開催する「山本亮平・ゆき展 色は匂へど」のご案内です。今展は通常と異なり、初日の11時台、12時台は事前予約制(満員)となり、また会期中盤の28日(木)は臨時で休みとなります。どうぞご注意ください。
「いろはにほへと ちりぬるを」から始まる「いろは歌」。47文字を一つも重複させることなく七五調の韻文で作られた奇跡のようなパングラム。これに漢字を当てた「色は匂へど 散りぬるを~」は仏教的な無常を述べたものとも言われます。
山本亮平さんとゆきさんのお仕事は、江戸初期に有田で焼かれた器に根差しており、陶石と土窯による焼成によって当時の風合いを再現してきました。古典の方法に添っていけば、自ずとそれ近づくことができる。これが近年山本さんたちが実証してきた往年の有田焼の風合いでした。
さてそのうえで何を作るのか。この命題に対して山本さんたちは次の段階に移りつつあります。古典の質感の再現性をもって、単なる写しには落とし込まない。限られた因子を基にして、どのような現代の歌を詠むのか。これがここ数年のお二人の仕事から感じ取れる印象です。制作に関わる条件を絞り込みながらも、わずかな振幅から生まれる詩情豊かな器の世界。これが山本さんと「いろは歌」に共通する思いです。
さらに「いろは」のひらがなのごとく、中国から伝わった漢字を簡略化して草書体にした「かな文字」の美しさも山本さんの器と重なります。連綿と曲線を繋いでいくひらがなの美しさ。柳のようにしなやかでありながら、芯のある文字の流れ。400年前の有田の焼き物が中国や韓国の影響下で始まりながら、やがて時を経て日本独自の食器文化を培っていった辺境の美。山本さんたちの古典的な有田焼の手法に準じて、どう草書的な「ひらがな」に変換していくかも山本さんたちの古典再生の意識に通じています。
「いろはにほへと=色は匂えど」の「色」は花を表しており、「花は咲いても、やがて散ってしまう」ことを意味しています。この無常感も山本さんたちの器に感じる淡く消え入らんとする儚さの美であり、ゆえに愛おしい感情を呼び起こすのです。2014年以来10年に渡り見続けてきた山本さんの展示会も今回で5回目を迎えます。「色は匂えど」と同じく桜の開花の季節に重なりそうです。どうぞ山本さんたちの器を感じ取って頂ければ幸いです。店主
山本亮平・ゆき展 色は匂へど
2024年3月23日(土)~3月30日(土)
11:00~18:00 最終日は17時迄
作家在廊日 3月23日
※初日3月23日は予約制(予約は一杯となりました)
※3月28日は休みとなります。
プロフィール
山本亮平
1972年 東京都生まれ
1998年 多摩美術大学油絵科卒業
2000年 佐賀有田窯業大学短期修了
2024年 佐賀県有田町にて制作
平倉ゆき
1978年 長崎県生まれ
2000年 佐賀有田窯業大学短期修了
2001年 絵付師として三年間活動
2024年 佐賀県有田町にて制作