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一日一菓

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8月下旬に出版された茶人・木村宗慎さん著の「一日一菓」。1年間、365日をかけて和菓子と器を綴った新潮社のブログを一冊にまとめた本です。既刊の川瀬敏郎さんの「一日一花」に続く、和菓子編となります。お茶席にはお菓子はつきものですが、どちらかと言えば、お抹茶を引き立てる脇役的存在ではないでしょうか。それゆえに、亭主のもてなしが表れ易いもの。この本は、そのお菓子を中心に据えたところがユニークです。この本のページをめくるたびに思うのは、和菓子の美しさと、それに合わせた器の豊かさです。茶席で使う菓子器は、もう少し定型的なイメージを持っていましたが、この本を通して見ると、本当に幅の広い合わせ方があるものだと感心します。型にはめ過ぎず、かと言って崩し過ぎず、和菓子との調和の中で、一本の凛とした空気で貫かれているのに気付くことでしょう。目で味わって、読んで感じる。茶人・木村宗慎さんの美の世界に引き込まれます。器好きにも是非手にとって欲しい一冊です。

一日一菓
木村 宗慎 (著)
新潮社 (2014/8/22出版)
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現在、日本橋三越で、出版記念の「一日一器」展が開催されています。
8月27日(水)~9月2日(火) ※最終日は16時迄
日本橋三越本店6階特選画廊

by sora_hikari | 2014-08-31 23:27 | 見て歩き

LEE UFAN展@カイカイキキギャラリー

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元麻布にあるカイカイキキ・ギャラリーで開催中の「李禹煥(リ・ウーファン、Lee UFan」さんのトークショーに行ってきました。浅学ですが、書き留めのつもりで記述します。

李さんは1960年代後半から70年代初頭に現れた「もの派」と呼ばれる芸術ムーブメントを代表する方。その作品は、筆(刷毛)によるシンプルな軌跡、石、鉄、ガラスといったソリッドな要素で構成されています。今回のカイカイキキギャラリーの作品も、まるで禅庭のような佇まいです。それは、西洋の概念的なミニマルアートよりも、禅を軸とする思想性や茶の湯の削ぎ落とされた美学を感じます。

李さんの学生時代は西洋的文脈のアートが軸になっていたようで、日本発で戦後アートの流れは、まだ未整理だったそうです。国内で展覧会するよりも、海外での実績が逆輸入されることで再評価されるという、国内が自己確立していないアートシーンだったのでしょう。

「もの派」と言えば、地中から土を円柱状に彫り出しただけの関根伸夫さんの「位相-大地」は知っている方も多いかもしれません。石、木、紙、綿、鉄板などにあまり手を加えずに組み合わせただけの芸術作品。

60~70年代のアートは、もっと価値破壊的なパッションを原動力とする激しい方向や、アングラ劇のような退廃的な美学の中にあって、削り落していくだけの無口な「もの派」が同時に生まれたのは興味深いと思います。反米、反権威、高度成長。時代は自身の文化的確立を求めて模索していた時期だったのではないでしょうか。

その中にあって、李さんの活動は西洋的美術の文脈に対する、東洋発、日本発の美意識の再定義だったように思います。数寄屋、庭、書画に見られる日本的ミニマリズムの再構築。間の美学。そう、本来日本にあった意識を世界向けに翻訳し、新たに東洋と西洋の融合、またはどちらでもない新たな価値を提示したことに意味があったのではないでしょうか。

皮肉なことに、当時は李さんの評価は日本よりも海外からの方が早かったようです。ここ数年に再編された「もの派」の定義によって、さらに国際的にも日本でも評価も高まったようです。

こういう流れを見ると、何故、村上隆さんのギャラリーでこの展覧会が開催されているか繋がってくるように思います。表現の方法は違っても、日本文化の特殊性を明文化し、再構築していること。そして海外のアートシーンに拮抗し得る文脈でのプレゼンテーション。勝手な見方に過ぎませんが、そこに村上さんがシンパシーを感じているのも頷ける気がします。

トークショーの後半の方で、李さんが最近の日本のアートの貧弱さを嘆いていました。今の文明に対してアーチストの発想や態度が問われているのではないかと。一見すると、もの静かなアート作品の李さんですが、表現することへの情熱を語る背景に、ご自身の今まで歩んでこられた闘いや葛藤を垣間見た気がしました。

トークショーは会場が溢れんばかりで大盛況。若い人もたくさん参加していました。世界的アーチストというよりも、普段のまま自分の経験を説明する李さん。若い作り手も、きっと出発点は同じとして何か共鳴することがあったのではないでしょうか。先人に学ぶ。大切な機会だったと思います。


李禹煥 展
2014年07月25日 – 2014年08月21日
開廊時間 :11:00 – 19:00
閉廊日:日曜・月曜
カイカイキキギャラリー
(東京都港区元麻布2-3-30元麻布クレストビルB1F)
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by sora_hikari | 2014-08-10 19:40 | 見て歩き

書肆・逆光 @ 八丁堀

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これだけ本が溢れた中で、何故人は古書を買うのか。これだけものが溢れた中で、何故人は古物を買うのか。趣味、探究、好奇心、希少性、知的充足、物欲、実用。人それぞれあるだろうけど、自分の内面が問われているようにも思う。必要なものが溢れると不必要。不必要なものがもたらす心の必要。このパラドックス。古書と古物の店「書肆・逆光」(しょし・ぎゃっこう)。東京・八丁掘にて。

古書と古物 書肆 逆光(しょし・ぎゃっこう)
東京都中央区八丁堀2-3-3 2F
12時〜19時 日曜休
Tel&Fax 03-6280-3800
店主のブログを是非

by sora_hikari | 2014-08-10 02:01 | 見て歩き

安永正臣展 @ プラグマタ

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八丁堀のプラグマタで開催中の安永正臣さんの個展に行ってきました。釉薬の成分を型で焼いたオブジェ。発掘品のような佇まいです。本展のサブタイトルは、「Sand Dune」=砂丘。店主ペトロスさんによって、海辺の砂浜に流れ着いた物体のようなディスプレイです。作品、それに合わせた展示とDM。空間そのものが作品です。

安永正臣展 
2014年8月2日~10日
12:00~19:00(最終日は18:00まで)
プラグマタ(東京・八丁堀)
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by sora_hikari | 2014-08-10 01:51 | 見て歩き

茶と美 -柳宗悦の茶- @ 日本民藝館

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日本民藝館で開催中の「茶と美 柳宗悦の茶」展に行ってきました。先の黒田辰秋が手の匠ならば、こちらは眼の匠と言えるでしょうか。茶の湯の権威と民藝には距離があるように思えますが、茶人の本来の美に対する直観と見立ての眼力を、柳宗悦は絶賛しています。批判的なのは、その後の形骸化された物の見方や権威に対してでしょう。柳宗悦の茶に対して、そして器に対する考え方は、著作の「茶と美」に明瞭に書かれており、その視点を知るには良い一冊です。今回の展示会を観て、民藝館にこんなに茶碗や茶道具があるんだと感心しました。


茶と美 -柳宗悦の茶-  
2014年1月10日(金)-3月23日(日)
日本民藝館
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by sora_hikari | 2014-02-07 00:34 | 見て歩き

黒田辰秋の世界 @ 横浜そごう美術館

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横浜そごう美術館で開催中の「黒田辰秋の世界」展を見に行きました。民藝に触発され木漆工一筋に生きた人。当初は塗師の家系に生まれましたが、その分業制に疑問を感じ、独学で木地から仕上げまで一貫制作しました。力強くどっしりとした輪郭に、木と漆の艶めかしさを併せ持った美しい仕事の数々。生前、黒田辰秋の作品の理解者であり、顧客でもあった文化人たち(柳宗悦、河井寛次郎、鍵善良房、白洲正子、小林秀雄、武者小路実篤、川端康成、黒澤明)の愛用品ごとに会場構成されている点が、この展示会のサブタイトルである「目利きと匠の邂逅」を意味しています。木の性質と魅力を知り尽くした職人肌の巨匠。晩年には人間国宝に。民藝の流れに置かれる黒田辰秋ですが、決して下手の作でなく上手の仕事という点からは、より作家的であったと言えるでしょう。最近、このように古典や技をきちんと踏まえた仕事に惹かれます。


生誕110年 黒田辰秋の世界 ~目利きと匠の邂逅~ 
2月1日(土)~3月10日(月)
開館時間:午前10時~午後8時
※最終日は午後5時閉館、入館は閉館の30分前まで
横浜そごう美術館
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by sora_hikari | 2014-02-07 00:15 | 見て歩き

希水展 -和美錆- @ ギャラリー・ヨルカ

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東日本橋のギャラリー・ヨルカで始まった書家・中澤希水さんの「和美錆」展に行ってきました。鉄錆のシートに書かれた「書」。特殊な加工で定着された「言葉」。それは書を工芸的なアプローチで形にした作品です。墨と紙とは違ったテクスチャーの「書」は、より物質化され「モノ」としての存在感を生み出します。墨跡ならぬ鉄跡の妖艶な「書」は絵画的でもある。普段の暮らしとは距離のできてしまった「書」を、もう一度近づける為の試みとも言えます。視点を変えることで、あらためて「書」の魅力を感じて欲しい。そんな思いが伝わってきます。


希水展 ~和美錆~
2014年1月10日(金)~16日(木) 会期中無休
12:00~19:00  
在廊日1月10日、13日、14日
ギャラリーヨルカ(東京・東日本橋)
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by sora_hikari | 2014-01-11 00:35 | 見て歩き

板谷波山の夢みたもの @ 出光美術館

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東京・丸ノ内の出光美術館で始まった「板谷波山の夢みたもの」展に行ってきました。板谷波山(いたや・はざん)は、明治・大正・昭和にかけて、日本の近代陶芸を支えた第一人者。陶芸を芸術の粋まで高めた妥協を許さない技巧的な作風で知られています。その器胎は中国陶磁を基にし、紋様は欧州のアールヌーボーの影響を受けていますが、その枠を超えて波山独特の美の世界に昇華しています。装飾的な作品になりますが、決してくどさはなく、むしろ静かな淡い色合いや彫の陰影による白磁など気品のある姿に感銘を受けます。没後50周年ということで、波山を知るのに総覧的な内容になっています。完成品のみならず、素焼き段階の細密な彫りの線や、意外と激しいタッチの植物の図案などの制作過程を見れるのも貴重なことです。新年スタートに相応しい、清々しく見応えのある波山ワールド。お勧めです。


板谷波山の夢みたもの
2014年1月7日(火)~3月23日(日)
10時~17時 (金曜は19時迄)
月曜日休館 ※1月13日は開
入館料:一般1,000円
出光美術館(東京・丸ノ内) ホームページ


by sora_hikari | 2014-01-08 23:20 | 見て歩き

根来展 @ ミホミュージアム

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滋賀県信楽町にあるMIHO MUSEUMで開催されている「根来」展に行ってきました。根来(ねごろ)とは、平安~室町の中世に作られた朱塗りの漆器。経年の使用で上の朱色が掠れてしまい、下地の黒色がのぞいたものを総称しています。祭祀用に使われたものが多くお寺にまつわる用途が多いようです。根来は骨董愛好家の間で根強い人気がありますが、今回のMIHO MUSEUMの規模は総数400点を超える過去にない規模の見応えのある内容になっています。時間を経て生み出された朱と黒のコントラストは、独特のテクスチャーとなり、妖艶な抽象画のようにも見えます。元来、漆器は陶磁器よりも日本の生活用具として身近なものだっただけに、用途のバリエーションも広く、いろいろな形の根来を愉しむことが出来ます。紅葉がピークを迎えた今、ミュージアムに向かう景色も合わせて楽しめる展示会です。会期中に行けない方には、本展用に作られた図録をお勧めします。根来を知るには最適な内容、豪華な造りで価格的にも十分満足のいくものです。アマゾンでも購入できます。


朱漆「根来」 ~中世に咲いた華~
2013年9月5日~12月15日
MIHO MUSEUM
ホームページ

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by sora_hikari | 2013-11-22 18:18 | 見て歩き

川口美術 @ 京都

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京都の下鴨宮河町にある川口美術に行ってきました。ここは、主に韓国の骨董と朝鮮家具を扱うギャラリーです。李朝をはじめ、高麗もの、新羅土器、青松など幅広い品揃えです。家具も箪笥、お膳、盆、飾り棚など充実しています。韓国に年数回通い、直接選んだ品々は見応えがあります。少し背伸びをすれば持ち帰ることが出来る美術品です。骨董以外に、朝鮮ものをベースにする現代作家の展示会も年に数回開催されているようです。ご店主の落ち着いたお人柄が、展示されているものに深みを増すように思います。大人の楽しめる店。京都に行ったら通いたいお店が増えました。


骨董&ギャラリー 川口美術
京都市左京区下鴨宮河町62-23
11:00~18:00(月・火曜定休)
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by sora_hikari | 2013-11-22 17:49 | 見て歩き