朴英淑の白磁展

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虎ノ門にある菊池寛実記念 智美術館で開催されている朴英淑(パク・ヨンスク)さんの白磁展へ行ってきました。朴さんは60歳になる韓国の女性陶芸家。70~80年代には素朴な粉青の陶器を、90年代半ばから洗練された白磁の器を作っていらっしゃいます。この企画展では、月壺(げっこ)と言われる18世紀半ばの朝鮮王朝時代に作られた白磁壺を再現した展示が中心になっています。形は日本民藝館などで見られる李朝期の大壺に似ていますが、侘びた風情と違い、仕上がりの硬い土と純白の釉薬は、どこまでも清らかで、この「月壺」という壺を大きく象徴しています。純白の土を1350度の高温で還元焼成した白色は、不純物を全て焼き尽くしたかのような純粋さがあります。壺は大きなもので高さ60センチを超える迫力のあるサイズです。成型上、上部と下部を分けて作り、それを合わせて1つの壺の形にしているため、焼成時にその繋ぎのところが少し垂れていて、自然の重力が生み出すその歪みが微妙なシルエットと影を作り、美しい姿を見せています。白の清らかさと静けさ。まろみの形に包み込まれた空間。この美術館特有の照明効果もあって、暗がりと浮き立つ白のコントラストが幽玄の美を見せています。朴さんは、青の簡略文様を施した白磁の食器を主に作っていますが、50歳の頃から白磁の大壺も作る決心をし、研究の傍ら5~6年が過ぎ、2001年にようやく焼成にこぎつけるも、上下の合わせがうまくいかず御苦労されたようです。しかし、その合わせのずれこそが、他人同士が出会い理解し合う様にも感じられ、60歳を迎えてようやく耳順という道理を得たとのことです。この白磁壺の他に、朴さんの白磁皿に李禹煥(リー・ウーファン)さんがコバルトや辰砂を筆の軽やかなタッチで絵付けしたものや、朴さんのコバルト模様をアクセントにした白磁の食器も並んでいます。さらに白磁壺に合わせた川瀬敏郎さんのインスタレーションも見ものでしょう。明治・大正・昭和にかけて石炭と投資で財を成した菊池寛実の娘である菊池智さんの名を持つ美術館。ホテルオークラやスウェーデン、アメリカ大使館などが隣接する一種独特の雰囲気の漂う地域で見る「白」の世界は、普段目にしている器の世界とはまた違った感覚を呼び起こす体験になりました。


朴英淑の白磁
-月壺と李禹煥の絵皿-
2008年7月12日-9月15日 ※月曜休館(9月15日祝は開館)
11:00-18:00(入館は17:30まで)
観覧料:一般1300円
菊池寛実記念 智美術館(東京虎ノ門) ※HP

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by sora_hikari | 2008-08-23 00:48 | 見て歩き

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