「壷田和宏・亜矢展 大地と繋がる器」8日目

壷田和宏・亜矢展 大地と繋がる器」の8日目。会期は明日12月13日(日)までとなります。最終日は時間を繰り上げて17時で終了させて頂きます。

「畑で採れたような。新鮮で美味しそう。」ご来店になったお客様の言葉。確かに壷田さんたちの器は、採れたての野菜か果実のように見えます。まだ泥がついていて、自然に任せるまま不揃いながら、太陽をしっかり浴びてと大地の栄養を十分に吸収したように。

標高1000mある宮崎県高千穂町の壷田さんたちの暮らしの環境を知ると、滋味豊かなうつわが生まれることに素直に納得します。お二人は三重県(和宏さん)と愛知県(亜矢さん)のご出身で、大学は愛知県立芸術大学の同級生です。在学時には鯉江良二さんも教鞭をとられていた陶磁を専攻しました。早くも学生時代に結婚したため、陶芸よりも生活のために解体屋や新聞配達のバイトをしながら暮らしていました。その頃ふらっと自宅を訪れた彫刻家が、河原に工房や薪窯を一緒に作ってくれて去っていき、それをきっかけに、原土も廃材の薪も無償で手に入ることで本格的に陶芸に取り組み始めたそうです。最初の独立の場は瀬戸にも近い愛知県長久手市。しかし借主との関係で退去せざる得なくなり、三重県伊賀市へ生活の場を移します。ところが、今度は、建設工事の関係で工房の周りを産業廃棄物に囲まれ、やむなく撤退。今度こそは誰にも邪魔されない場所へと辿り着いたのが、ここ高千穂でした。

自給自足に近い生活をしながら、陶芸の窯も道具もいろいろな工夫が見られます。規格化された方法よりも、どうすれば作れるのかと発想することが壷田さんのうつわづくりの原点にあるように思います。うつわのベースには弥生土器、須恵器、中世の壷や甕、李朝、南仏の民陶、阿蘭陀のデルフトなど、古今東西の庶民陶の隠喩を感じますが、しかしそれを再現するのではなく、彼らのフィルターを通した結実を見ることが出来ます。

今でこそ原土を掘ってきて薪で焼く若い作家も増えてきましたが、生活食器を軸にする作家が、土そのものに拘り、焼いて表現することは当時は少数派だったと思います。そういう点で、壷田さんたちは原土派の先駆者と言えるでしょう。土の特性を活かして薪で焼いて表現する。単に焼いても凡庸なものしか出来ません。壷田さんたちの器をつい暮らしの文脈だけで見てしまいがちですが、実はとても高度な焼きを狙っていることが分かります。その基礎となる地質的な知識、焼成の理論的な理解、それを実践し続ける経験値。この点も大いに重視すべきでしょう。壷田作品の根底にあるのは、暮らしの物語りだけではなく、しっかりとしたモノとして語ることを見逃していけないのです。

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壷田和宏・壷田亜矢展 大地と繋がる器
2020年12月5日(土)~13日(日)会期中無休
営業時間  11時~最終日は17時まで
ギャラリーうつわノート
埼玉県川越市小仙波町1-7-6 地図

略歴
壷田和宏 1972年 三重県伊賀市生まれ
壷田亜矢 1972年 愛知県安城市生まれ
1995年 愛知県立芸術大学陶磁専攻科卒
1995年 愛知県長久手町に築窯
2000年 三重県伊賀市に築窯
2009年 宮崎県高千穂町五ヶ所に移住
2020年 現在、同地にて制作

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by sora_hikari | 2020-12-12 22:18 | 壷田展

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