田村文宏 展 ~南海の器~ 7日目

田村文宏展(~12/13迄)の7日目。この冬一番の冷え込みでした。本展のテーマである「南海の器」についてご紹介します。「南海の器」とはインドネシア半島を中心とする中世の王国で作られた東南アジア(カンボジア、ベトナム、タイ、ミャンマー)の古い器()を指しています。タイの宋胡録(スンコロク)やベトナムの安南手などは桃山時代の茶人にも愛好され、古くから日本と歴史的な繋がりもある器です。本展で南海の器をテーマにしたのは、元来、田村さんが作ってきた器の灰釉や鉄釉の外形的な共通性に加え、この個展のためにそれを意識して製作したことに由ります。田村さんの場合、古陶を本歌にし忠実に写すことはしていませんが、外形的なエッセンスや、それらの持つ素朴な強さに対する内面的な共感があるように思います。また20代にカンボジアへの海外支援活動に参加した経験もあり、その国に暮らす人々への思いにも繋がっているのかもしれません。田村さんの作る器は、南海の器の中でも、クメール(現カンボジア)やタイ北部の褐釉陶器()や灰釉陶器()の古陶と通じるところがあります。それらは、当時のヤキモノ先進国の中国の影響を受けながら、独自の造形や焼成を生み出しました。その国の吸収の仕方やアレンジによって派生する、ある種の緩みが、かえって人間性を感じさせるように思います。技巧面よりも、そういう素材や焼きへの根っこの人間臭さに南海の器の魅力を感じているのだと思います。田村さんが陶芸を学んだ瀬戸は、日本で先駆けて施釉陶器に成功した地域です。不思議なことに、当時の古瀬戸()の灰釉や鉄釉の器の作風は、南海の器と類似した点があります。本人が意識しないものの、何らかの因果があるのかもしれません。本展に並ぶ田村さんの器の素朴な力強さ。朴訥としながらも芯のある人物像とも重なります。その根底にある田村さんという作り手の精神的な側面にも触れていただければと思います。

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鉄釉蓋壷(小) 径10cm×高さ14cm 4410円

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鉄釉平瓶 径10cm×高さ14cm 3990円

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灰釉平鉢 径21cm×高さ5.5cm 4200円

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灰釉平瓶 径12cm×高さ9cm 3990円

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鉄釉鉢5寸 径15.5cm×高さ5cm 2625円

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鉄釉蓋壷(大) 径14cm×高さ17cm 6300円

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灰釉大皿 径32cm×高さ8.5cm 13650円

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灰釉俵型壷 径16cm×高さ23cm 10500円

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灰釉飯碗 径13.5cm×高さ6cm 2205円

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鉄釉大皿 径36cm×高さ9cm 18900円

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灰釉粉引マカイ碗 径14cm×高さ6cm 2625円

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鉄釉瓢箪形瓶 径12cm×高さ17cm 15750円

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鉄釉俵形壷 径16cm×高さ19cm 12600円


田村文宏 展 ~南海の器~
2011年12月3日(土)~13日(火) 会期中無休
11:00~18:00
ギャラリーうつわノート (埼玉県川越市) 地図
※田村さんの在廊日が追加になりました。→12/10(土),11(日),13(火)
(立ち会い時間は変則的になる可能性があります)

田村文宏 展 ~南海の器~ 7日目_d0087761_20235945.jpg田村文宏 展 ~南海の器~ 7日目_d0087761_20241578.jpg
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by sora_hikari | 2011-12-09 17:33 | 田村文宏2011

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